競馬で馬券を購入する際、必ず確認するのが「オッズ」です。オッズとは倍率のことであり、その馬券が的中した際、購入金額の何倍が払い戻されるかを表示するものです。しかしこのオッズ、場合によっては「〇〇倍」と表記されたり、「△△円」と表記されたりと、初心者には分かりにくいもの。
そこでこのオッズの基本や券種との関係などをまとめてみました。
目次
オッズとは倍率のこと
まずはオッズというもの自体に関して説明しておきましょう。「オッズ」は英語で「odds」という単語のこと。この単語の意味は、「賭け率」、「見込み」、「勝算」などとなりますが、競馬の場合は「賭け率」という意味で使われます。
「倍」と「円」表記の違いは?
競馬のオッズは「円」単位で表記されたり、「倍」単位で表記されたりしますが、どちらで表記されたとしても、倍率は変わりません。「倍」表記はそのままとらえて、賭けた金額が何倍になるかを表したものです。
「円」表記の場合は、「その馬券を100円購入して的中したら何円になるか?」という形の表記になります。競馬の最低投票単位が100円のため、競馬ではこういった表記をされることが多々あります。
例えばオッズ10倍の馬券であれば、「1,000円」と表記されますし、5倍の馬券であれば「500円」と表記されます。
万馬券は何倍の馬券になるのか
競馬をしているとよく耳にする「万馬券」。いわゆる大穴馬券のことですが、これは「円」表記で1万円以上になる馬券の総称になります。「円」表記で1万円ということは、100円を賭けたら1万円になる馬券ということ。つまり「倍」表記にすると100倍以上の馬券ということになります。
万馬券とは100倍以上の馬券全てを表現する呼び方ということになります。
オッズが決まる基準は人気で変わる
馬券購入者から見るとこの見出し通りの現象ということになりますが、正確に言えば「購入された金額により人気が決まる」、「購入された金額によってオッズが変わる」というのが正解です。
少々細かい計算になりますが、実際の数字を入れて説明しておきましょう。
計算をしやすくするために、単勝式の馬券に絞って話を進めていきます。仮に単勝の馬券が合計1万円売れたとしましょう。この1万円のうちまずはJRAの取り分が差し引かれます。このJRAの取り分を「控除率」といい、控除率は馬券の種類により率が決められています。ちなみに単勝馬券の控除率は20%のため、1万円売れたらこのうち2,000円は無条件でJRAの取り分となり、差額の8,000円が払い戻し対象金額となります。
この1万円がどのように賭けられているかでオッズが変動します。では出走馬4頭の場合、オッズがどのように決まるかを計算してみましょう。
★CASE01
出走馬 | 単勝販売金額 | 的中した際の払戻金 | 100円あたりの払戻金 (円表記オッズ) |
オッズ (倍表記) |
出走馬A | 5,000円 | 8,000円 | 160円 | 1.6倍 |
出走馬B | 2,000円 | 400円 | 4.0倍 | |
出走馬C | 2,000円 | 400円 | 4.0倍 | |
出走馬D | 1,000円 | 800円 | 8.0倍 |
販売された1万円が上記のような分配で販売されたとしましょう。この場合もっとも購入金額の多い出走馬Aが1番人気となり、もっとも少ない出走馬Dが4番人気となります。続いて払戻金額の計算です。
仮に出走馬Aが勝った場合。出走馬Aに投票された金額は5,000円ですから、100円が50口購入されたことになります。払い戻しの総額は、購入金額の1万円からJRAの取り分である控除率分を差し引いた8,000円です。
この8,000円を50口(1口=100円)で均等に分けますので、計算式は以下の通り。
8000÷50=160
つまり1口(=100円)に対し160円の払い戻しということになります。このオッズを円表記すると160円。倍表記すると1.6倍となります。
同じように計算し、B,C,Dのオッズも決まり、このオッズにより人気が決まります。ここでは出走馬4頭、単勝のみと非常に分かりやすい形で説明しましたが、実際にはすべての馬券に対してこのような形の計算が行われ、オッズが確定しています。
★CASE02
出走馬 | 単勝販売金額 | 的中した際の払戻金 | 100円あたりの払戻金 (円表記オッズ) |
オッズ (倍表記) |
出走馬A | 10,000円 | 10,000円 | 100円 | 1.0倍 |
出走馬B | 0円 | 7,000円 | 70円(全員に) | —倍 |
出走馬C | 0円 | 70円(全員に) | —倍 | |
出走馬D | 0円 | 70円(全員に) | —倍 |
オッズに関する特殊なケースを紹介しましょう。例えば合計1万円がすべて同じ馬に投票された場合。ここまでの計算ですと、出走馬Aのオッズは、1万円の投票に対し8,000円の払い戻しですから、0.8倍ということになります。
しかし競馬法で馬券のオッズは1.0倍以上という定めがあるため、こういったケースではJRAの控除率は考慮せず、オッズ1.0倍で払い戻しが行われます。こういった状況を「元返し」と呼びますが、まず遭遇することはないので知識として持っておきましょう。
★CASE03
出走馬 | 単勝販売金額 | 的中した際の払戻金 | 100円あたりの払戻金 (円表記オッズ) |
オッズ (倍表記) |
出走馬A | 4,000円 | 8,000円 | 200円 | 2.0倍 |
出走馬B | 3,200円 | 250円 | 2.5倍 | |
出走馬C | 2,800円 | 280円 | 2.8倍 | |
出走馬D | 0円 | 7,000円 | 70円(全員に) | —倍 |
二つ目の特殊なケースです。ある馬の単勝が一切売れなかったケース。中央競馬ではめったに見ない現象ですが、こういったレースで出走馬Dが勝利した場合、特例として「特払い」が適用されます。
特払いが発生した場合、その券種を購入したすべての馬券に対し、0.7倍もしくは0.8倍の金額が払い戻されます。つまり的中していないA,B,Cの単勝を購入した方全員に、購入金額の7割もしくは8割が払い戻されるということになります。
いずれにせよこういった特殊な2つのケースを除けば、オッズが1倍を下回ることはありません。少なくとも元返し、ほとんどの場合はプラスとなるようになっています。
馬券の種類によってもオッズは変わる
オッズは馬券の種類によっても大きく変動します。簡単に言えば、組み合わせの少ない券種ほどオッズは低く、また的中するケースが多いほどオッズは低くなります。
下の表は、18頭立てのレースにおける、券種ごとの組み合わせ点数と的中条件です。
馬券の種類 | 組み合わせ | 的中条件 |
単勝 | 18通り | 購入した馬が1着なら的中 |
複勝 | 18通り | 購入した馬が3着以内なら的中 |
枠連 | 64通り | 1着馬と2着馬の入った枠の組み合わせを購入していれば的中 |
ワイド | 153通り | 購入した2頭がそろって3着以内に入れば的中 |
馬連 | 153通り | 購入した2頭がそろって2着以内に入れば的中 |
馬単 | 306通り | 購入した2頭が、順番通り1&2着に入れば的中 |
三連複 | 816通り | 購入した3頭がそろって3着以内に入れば的中 |
三連単 | 4,896通り | 購入した3頭が、順番通り1&2&3着に入れば的中 |
単勝と複勝、馬連とワイドなどは組み合わせ点数が同じですが、的中条件が複勝、ワイドの方が緩いため、比較すればオッズは低くなります。
では、2020年に行われた全レースの最高配当と最低配当、そして平均配当を確認しておきましょう。JRAのデータベースを参照しますが、ワイド馬券のみデータ集計がないのでワイドは省きます。
馬券の種類 | 最低配当 | 最高配当 | 平均 |
単勝 | 110円 | 38,250円 | 1,064.0円 |
複勝 | 100円 | 7,910円 | 347.4円 |
枠連 | 120円 | 86,110円 | 2,256.3円 |
馬連 | 110円 | 160,990円 | 5,758.1円 |
馬単 | 240円 | 511,830円 | 11,581.7円 |
三連複 | 150円 | 1,472,420円 | 22,170.9円 |
三連単 | 550円 | 6,728,500円 | 136,387.8円 |
ここでは円表記にしましたので、すべて100円賭けた場合の払戻金額ということになります。最高配当をみれば一目瞭然ですが、複勝がもっともオッズが低く、三連単がもっともオッズが高い券種ということになります。
最もオッズが高い馬券と低い馬券
上の表で紹介した通り、もっともオッズの低い馬券は複勝であり、最もオッズの高い馬券が三連単となります。その実例をそれぞれ紹介しましょう。
複勝オッズがすべて100円の伝説重賞
★2000年3月19日 阪神11R 阪神大賞典(GⅡ)
着 | 馬名 | 人気 | 単勝オッズ | 複勝オッズ |
1着 | ①テイエムオペラオー | 1番人気 | 200円 | 100円 |
2着 | ③ラスカルスズカ | 2番人気 | (260円) | 100円 |
3着 | ⑤ナリタトップロード | 3番人気 | (290円) | 100円 |
勝ったテイエムオペラオーは前年の皐月賞馬。その後3歳で有馬記念3着、京都記念1着と結果を残している馬で1番人気。2着のラスカルスズカは前年菊花賞3着馬で、前走でOP特別を圧勝していました。
3着のナリタトップロードは前年の菊花賞でテイエムオペラオー(2着)、ラスカルスズカ(3着)を負かして菊花賞馬になった馬。京都記念でもテイエムオペラオーとタイム差なしの2着の馬でした。
この3頭が圧倒的な人気を集め、人気通り入線したことで複勝のオッズは3頭ともに100円の元返しでした。
重賞における三連単最高配当は牝馬限定GⅠ
★2015年5月17日 東京11R ヴィクトリアマイルカップ(GⅠ)
着 | 馬名 | 人気 | 単勝オッズ |
1着 | ⑤ストレイトガール | 5番人気 | 1,410円 |
2着 | ⑦ケイアイエレガント | 12番人気 | (4,740円) |
3着 | ⑱ミナレット | 18番人気 | (29,180円) |
三連単オッズ | ⑤→⑦→⑱ | 20,705,810円 |
2015年のヴィクトリアマイルカップは、⑱番のミナレットが大逃げ、これを単騎で⑦番のケイアイエレガントが追走し、3番手以下が混戦の流れ。人気サイドが後方で牽制しあったこともあり、人気薄の前2頭が2,3着に逃げ残り大波乱になりました。
ちなみにこのミナレットという馬、三連単の高額配当と非常に縁が深い馬で、中央競馬の三連単最高配当ランキングTOP10に3度も登場しています。
このヴィクトリアマイルが歴代5位のオッズ。ミナレットが14番人気で勝った新馬戦では、2&3着が同着で三連単の的中は2種類。その2種が歴代1位(オッズ29,832,950円)と歴代10位(オッズ14,916,520円)になっています。
1頭で10万倍を超える配当に2度も絡んだ馬はこの馬だけでしょう。
本当の最高オッズならWIN5
ここまではひとつのレースにおけるオッズについて書いてきましたが、最高オッズという点で他の追随を許さないのがWIN5でしょぅ。
毎週日曜日の後半5レースの勝ち馬を連続で的中させる馬券であり、過去の最高配当は5億5444万6060円。倍表記で書くと554万4460.6倍というとんでもない馬券になります。
ちなみに後半5レースがすべて18頭立てだった場合の組み合わせは1,889,568通り。三連単の比にならないほど当てるのが難しい馬券ということになります。
オッズが高いメリットとデメリット
馬券を購入するときに必ず確認すべきオッズですが、ではオッズが高い馬券を狙うのがいいのか、オッズが低い馬券を狙うのがいいのか、ここは迷うとことかと思います。そこでオッズが高い馬券を狙う際のメリットとデメリットを考えてみましょう。
メリット・一撃で大金が狙える
オッズが高い馬券を狙うメリットは、何より高額の払い戻しを期待できるという点です。上で紹介したWIN5などは、100円が5億円になるのですから、これはメリット以外の何物でもありません。
せっかく競馬というギャンブルをする以上、高額の払い戻しを受けるのが夢であり目標のはず。それを実現するにはオッズの高い馬券を狙うしかありません。
デメリット・まず当たらない
オッズの高い馬券を当てれば高額の払い戻しを受けられるのは事実です。しかし重要なのは「当てれば」という点。ハッキリ言ってしまえば、高額オッズの馬券を予想して当てるのは至難の業であり、まず当たりません。
日本中から数百万人の方が、真剣に馬券を当てようと予想し投票しています。その結果出走馬には人気というものが発生し、人気の高い馬に投票すればオッズは低くなります。
つまり、オッズの高い馬券を予想して的中させるということは、数百万人単位の競馬ファンが予想した結果とは違う、予想外の結果が起こった時に限られるわけです。この予想外を予想して当てるというのは、理論的にも無理があるということはお分かりいただけるでしょう。
高いオッズを狙えば的中率は著しく下がります。実際自他ともに認める穴党である筆者の馬券は滅多に当たりません。それが高いオッズの馬券を狙うデメリットということになります。
まとめ
馬券を購入する際オッズは必ず確認しましょう。予想した馬券が的中しても、1万円購入して8,000円の払い戻しでは、当てても負け、いわゆるトリガミになります。
とはいえ、オッズで馬券を決めるのも愚策。オッズは多くの競馬ファンが予想した結果にすぎず、レースの結果とは関係ありません。
まずは自分なりにしっかり予想をして購入する馬券を決める。買い目が決まったらそのオッズを確認し、どの馬券が的中しても外れないように購入金額を工夫する。これがオッズの正しい使い方です。
もちろんレースによっては、「抑え馬券が当たってもトリガミだけど、本線で当たった時の払い戻しを大きくしよう」ですとか、「オッズなんて関係な応援している馬を思いっきり買おう」という判断をするのも時にはありでしょう。
ただし、こういった特別な理由がない限り、当たればプラスになるよう、オッズを確認しながら買うのをおすすめします。